目次: ベンチマーク
先日(2020年1月12日の日記参照)の続きです。
あまりにもglibcフルアセンブラ版memsetの実装が速くて勝てないので、観念して実装を見たのですが、序盤(1バイト〜32バイト)が弱い理由と、以降(33バイト〜)で勝てない理由がわかりました。
他の実装と違ってglibcはサイズの大きい方から条件を見ています。どうしても条件分岐命令を通る回数が増えるため、序盤に弱いです。
中盤は96バイトまではNEON store x 4と分岐で捌いていて、ループを使いません。分岐もcmpしてbranchではなく、ビットセットされていたら分岐する命令(tbz, tbnz)を使っています(※)。
つまり私が書いたmemsetはループで処理している時点で、ほぼ勝ち目がなかったということです。
グラフでは63バイトまでしか測っていなかったから気づかなかったのですが、ループの2週目に入る65バイトから、さらにボロ負けです。いやはや、これは勝てないですね……。
(※)cmp, branchの2命令をtbz 1命令にする辺り、AArch64アセンブラならではの実装に見えますが、実はCでもif (a & 0x10) とか書くとコンパイラがtbz命令を使います。コンパイラ侮りがたし。
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先日memsetを書いていたとき(2020年1月12日の日記参照)に気づいたのですが、glibcのフルアセンブラ版memsetの性能が2通り(遅い、速い)あることに気づきました。だいたい1割くらい性能が変わります。
遅いときと比較すると、自作のmemsetの方が速いですが、速いときと比較するとボロ負けします。割と性能が迫っているためか、影響が大きいです。
何が違うんでしょうね?コードは当然同じですから、違いはmemset関数のロードされるアドレスくらいです。まさかなと思って、スタティックリンクしたら安定して速くなりました。
ダイナミックリンクだと、アプリ側は0xaaaac4fba560で、glibcだけ0xffffbf2dce00のような遠いアドレスに飛ばされます。ベンチマーク中は、アプリのコード ←→ glibcのコードを頻繁に行き来することになるので、TLBミスヒットの影響が出ているんですかね……??
真因はわかりませんが、アドレスが関係している可能性は高いです。今後、似たようなことをやるときは、スタティックリンクで測った方が良さそうです。
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最近、見かけるSIMD命令セット(AVXもNEONも)には、レジスタ下位 [7:0] の1バイトを、レジスタ上位 ... [31:24] [23:16] [15:8] の各バイトに配る命令が用意されています。
この命令はどういう需要があるんだろうか……?memsetの実装では超役に立ちましたが、他の使い道が良くわかりません。
Facebookで上記の話をしていたところ、
と教えてもらいました。なるほど、スカラベクトル積のスカラ側を配るときに便利ですね。
ちなみにSIMDのない処理系はどうしているのか見てみると、
int a = (何かの数字);
としたときに、
a &= 0xff;
a *= 0x01010101;
のようにand, mov, mulを使っていました。もちろん、
a &= 0xff;
a |= a << 8;
a |= a << 16;
のようにand, shift, or, shift, orでもできますが、今日日のプロセッサだと整数乗算の方が速そうですね。
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NEON intrinsicを使って自分でmemsetを実装してみました。ざっくりした設計方針としては、
相手は汎用実装ですし、Cortex-A72に特化した実装なら楽勝だろう、などと考えて始めましたが、甘かった。glibcのフルアセンブラ版はかなり手ごわいです。
グラフの赤い線が、自作したmemsetの性能です。
最適化レベルO3のsimple memsetにはほぼ全域で勝てますが、サイズが小さいときのmuslは強い(サイズが小さい場合から判定しているから?)です。glibcのフルアセンブラもかなり強いです。測定によって勝ったり負けたりな程度です。
設計が甘すぎたことがわかったので、下記のように見直しました。
序盤でmusl memsetに負けていたのは、バイト数の条件判定の順序が良くなかった(大きいサイズから判定していた)ためなので、1番目で対策しています。2番目と3番目の方針は良いとも悪いとも一概に言えませんが、RK3399だとこれが一番性能が出ました。
設計意図通りにmuslの序盤(特に高速な1〜8バイト付近)と、glibcフルアセンブラの序盤(1〜32バイト)には勝てたものの、glibcフルアセンブラ版は中盤以降が強く、33バイト以降は全く勝てません。
私の作ったmemsetは32バイトまでは専用処理で、33バイトからループで処理するようになるので、33バイトから性能がかなり落ちます。
おそらくglibcフルアセンブラ版も同様に16バイトから性能が落ちるので、ループ処理していると思うんですが、それ以降の巻き返しが凄くて、33バイト以降はまったく勝てないですね……。どうやってんだろうね、これ?
コンパイラが変なandとかsubを出力しているのを見つけたので、アセンブラでも実装してみましたが、性能はほぼ変わりませんでした。設計の根底が違うんでしょうね。
RK3328(Cortex-A53)で測ってみると、muslには勝てますが、glibcフルアセンブラ版には勝ち目無しで、ほぼ全域に渡ってボコボコにされます。
基本設計が「余計なwriteをしてでも、とにかく速く終われ」なので、writeを正直に実行してしまうようなヘボいプロセッサになればなるほど勝ち目が薄いです。
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Cortex-A72でのmemsetはO2に-ftree-vectorizeと -fpeel-loopsを足すと、O3の性能とほぼイコールになることがわかりました。

gcc -O2 -ftree-vectorize -fpeel-loops -fno-builtinの測定結果(Cortex-A72)
元の処理が非常に単純なループ処理のためか、ループ系の最適化がメチャクチャ効くっぽいです。
GCCのGIMPLEを出力させ(-fdump-tree-all)眺めてみると、
こんな感じに見えます。正直言って、ループアンローリングなんて大したことないと思っていましたが、これほど効くとは思いませんでした。
メモ: 技術系の話はFacebookから転記しておくことにした。大幅に追記。
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