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2024年1月7日

M5Stackとesp32とArduino

目次: Arduino

M5Stackというボードが電子工作に便利らしいという話を聞き、M5 Core2とM5Stamp C3という小型のボードを買いました。Core2の方は機能豊富な分、お値段もそこそこ(8,000円くらい)します。M5Stampは安い(1,300円くらい)です。

開発環境

M5Stackのサイト(M5Stack document PLATFORMのページ)を見ると、AIなど特定用途向けを外すと開発環境は4つあるようです。多いなあ。派閥争い中でしょうか。

  • UIFlow
  • Arduino IDE
  • Micropython
  • .NET nanoFramework

1番目に表示されているUIFlowが一番おススメなのでしょうけど、残念ながらUIFlowはM5Stamp C3に対応していないようです。2番目に表示されていたArduino IDEにしました。Arduino IDEを使うなら素直にArduinoボードを買った方が良かったかな、まあいいか。

M5Stamp C3はデバッグできない

M5StackシリーズはいずれもEspressifのESP32ファミリーのSoC(IoT向けの小規模SoC)を採用しています。CPUとSRAM、一通りの低速系I/O I2C, SPI, I2Sなどの他に、Wi-FiやBluetoothに対応していて素晴らしいSoCです。無線技術に強いEspressifならではですね。

私が購入したM5Stamp C3はESP32-C3というSoCを採用しています。ESP32シリーズの中でC3は割と後発らしく、CPUが従来のXtensaではなくRISC-Vに変更されています。

新しいせいかCPUアーキを変更したせいか知りませんが、Arduino IDEでデバッグしようとしてもOpenOCDが繋がらないとエラーが出てデバッグできないです。ログを全部載せると長いので別ファイル(link ログ全部)にします。

Arduino IDEのOpenOCDエラー前後のログ(ボード: ESP32C3 Dev Module)
Debug: 215 114 command.c:155 script_debug(): command - init
Debug: 216 115 command.c:155 script_debug(): command - target init
Debug: 217 115 command.c:155 script_debug(): command - target names
Debug: 218 115 command.c:155 script_debug(): command - esp32c3 cget -event gdb-flash-erase-start
Debug: 219 115 command.c:155 script_debug(): command - esp32c3 configure -event gdb-flash-erase-start reset init
Debug: 220 115 command.c:155 script_debug(): command - esp32c3 cget -event gdb-flash-write-end
Debug: 221 115 command.c:155 script_debug(): command - esp32c3 configure -event gdb-flash-write-end reset halt
Debug: 222 115 command.c:155 script_debug(): command - esp32c3 cget -event gdb-attach
Debug: 223 116 target.c:1659 handle_target_init_command(): Initializing targets...
Debug: 224 116 riscv.c:444 riscv_init_target(): riscv_init_target()
Debug: 225 116 semihosting_common.c:107 semihosting_common_init():  
Error: 226 131 esp_usb_jtag.c:642 esp_usb_jtag_init(): esp_usb_jtag: could not find or open device!    ★JTAGが見つからない??
Debug: 227 131 command.c:545 run_command(): Command 'init' failed with error code -4
User : 228 131 command.c:608 command_run_line(): 
Error: 229 131 riscv.c:1755 riscv_get_gdb_arch(): Unsupported xlen: -1
Error: 230 131 esp_semihosting.c:67 target_to_esp_semihost_data(): Unknown target arch!
Debug: 231 131 riscv.c:490 riscv_deinit_target(): riscv_deinit_target()
Debug: 232 132 target.c:2225 target_free_all_working_areas_restore(): freeing all working areas

エラーの前後だけ切り出すとこんな感じです。JTAGデバイスが見つからんと言っているように見えますが、どうしたら良いか全くわかりません。しばらくはprintfデバッグするしかないようです。M5Stamp C3はM5Stackシリーズを初めて使う人が買うべきボードではなかった??

ArduinoとESP32ライブラリ

M5Stackについて書かれたブログやコードを見ていると、外部ライブラリ(AdaFruit, Lovyan GFXとか)を使う場合と、Arduino-ESP32ライブラリを使う場合があるようです。

Arduino-ESP32ライブラリのドキュメントはEspressifが公開しています(Arduino-ESP32 2.0.14 documentation)。このライブラリはOSSでGitHubにてソースコードが公開されています(Arduino core for the ESP32 - GitHub)。

どうやってライブラリを入れ替えるのかわかりませんけど、Arduinoライブラリの中を見ることはできそうです。ありがたいですね。

Arduino-ESP32ライブラリはESP32 IDF(IoT Development Framework)というEspressif独自APIのライブラリを使用して実装されているようです。ドキュメントはやはりEspressifが公開しています(ESP-IDF Programming Guide)。GitHubにてソースコードも公開されています(Espressif IoT Development Framework - GitHub)。

このライブラリはちゃんと見てないですが、バイナリ(*.a)しかない部分もあって若干意味不明に見えます……。まあライブラリの表面だけだとしてもソースコードがあってありがたいです。きっと。

編集者:すずき(2024/01/15 00:18)

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2024年1月5日

令和6年能登半島地震災害への寄付

正月も元日から日本を揺るがした能登半島の震災ですが、令和6年能登半島地震災害義援金(日本赤十字社のサイト)、受付が始まってましたので寄付しました。何かの助けになると良いな……。


寄付したと言いふらすのは行儀が良くないと昔は思っていましたが、言いふらしても誰も不幸にならないし「みんなやってる」「みんなやろう」も広まるし、悪いことはないので積極的に言うようにしています。

メモ: 技術系?の話はFacebookから転記しておくことにした。追記あり。

編集者:すずき(2024/01/05 17:23)

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2024年1月3日

VSCodeでRISC-Vボードをデバッグその4 - SSH Remote ExtensionでGDBをボードにアタッチ

目次: Linux

前回はLinuxマシン単独でGDBを使ってRISC-Vボードのデバッグを行うところまでを設定しました。

今回はその続きで、Visual Studio Code(以降VSCode)とSSH Remote Extensionを使ってGDBをOpenOCDに接続しRISC-Vボードをデバッグします。


C/C++ Extension Packをインストール

C/C++デバッグ用のExtensionをSSH接続先にインストールします。C/C++ Extension Packをインストールしておくのが便利だと思います。


launch.json fileの作成

左側のActivity BarからRun and Debugを選択して(矢印1)、create a launch.json fileを押すと(矢印2)、デバッガを選べと言われるのでC++ (GDB/LLDB)を選択します(矢印3)。もしC++ (GDB/LLDB)が選択肢に現れない場合は、ソースコードウインドウを全部閉じてからもう一度やってください。


CMakeLists.txtを選択していた時に出るエラー

C言語ではないファイルを開いてRun and Debugやcreate a launch.json fileを押すと選択肢が変わるので注意してください。例えばCMakeLists.txtを開いてRun and Debugを押すと"CMake does not support automatic debugging for this file"とエラーが表示されるだけで何も起きません。

VSCodeは何もファイルを開いていなければ使用可能なデバッガを全て列挙し、開いているファイルがあればそのファイルに対して使用可能なデバッガだけを表示するようです。この仕様は初見だと分かりにくいですね……慣れたら便利なのかなあ?

Linuxマシン側の準備

詳細はその2(2023年12月30日の日記参照)にて紹介していますので、ダイジェストでお送りします。

ボードとSSH接続先のLinuxマシンを接続します。メニューの[Terminal] - [New Terminal]で1つ目の端末を開いてOpenOCDを起動します。

OpenOCDの起動
$ sudo openocd -c 'bindto 0.0.0.0' -f tcl/interface/jlink.cfg -f tcl/board/sifive-hifive1-revb.cfg

メニューの[Terminal] - [New Terminal]で2つ目の端末を開いてGDBを起動し、実行ファイルをロードします。launch.jsonの"program"で指定した実行ファイルをロードしてください。

GDBの起動
$ riscv64-zephyr-elf-gdb build/zephyr/zephyr.elf

(gdb) target remote localhost:3333
(gdb) monitor reset halt
(gdb) load
(gdb) continue

UARTを見てRISC-Vボードが正常に動作していることを確認します。

UARTの確認
$ pyserial-miniterm /dev/ttyACM0 115200 --raw

ここまで確認出来たらいよいよVSCodeからGDBを起動できます。長かったですね。

デバッガの設定

先ほど紹介したcreate a launch.jsonを選択するとGDBを起動する設定が生成されます。

生成されたlaunch.json

{
    // Use IntelliSense to learn about possible attributes.
    // Hover to view descriptions of existing attributes.
    // For more information, visit: https://go.microsoft.com/fwlink/?linkid=830387
    "version": "0.2.0",
    "configurations": []
}

が、バグっているのか何なのか、ほぼ何も書かれていないlaunch.jsonが生成されます。なぜ……?無いものは仕方ないので、

launch.jsonに追記

{
    "version": "0.2.0",
    "configurations": [        
        {
            "name": "(gdb) Attach",
            "type": "cppdbg",
            "request": "launch",
            "program": "${workspaceFolder}/build/zephyr/zephyr.elf",
            "cwd": "${workspaceFolder}",
            "MIMode": "gdb",
            "miDebuggerPath": "/home/katsuhiro/work/zephyr-sdk/riscv64-zephyr-elf/bin/riscv64-zephyr-elf-gdb",
            "miDebuggerServerAddress": "localhost:3333",
            "setupCommands": [
                {
                    "description": "Enable pretty-printing for gdb",
                    "text": "-enable-pretty-printing",
                    "ignoreFailures": true,
                },
            ],
        },
    ]
}

上記のように変えます。デバッガのパス(miDebgguerPath)は適宜環境に合わせてください。


デバッガ起動

VSCodeのRun and Debugから先ほど作成した設定でデバッガを起動します。


デバッグ用のツールバー

デバッガが起動してOpenOCDに接続できるとVSCodeの上部に小さなツールバーが出てきます。出ない場合は下部にエラーメッセージが表示されるはず。


Pause後の画面の例

ツールバーのPauseボタン(左端)を押すと、HiFive1ボードの実行が停止して実行中のプログラムのソースコードが表示され、コールスタックの表示なども動作するはずです。ブレークポイントの設定や再開、ステップ実行などもできます。

私はCUIでもあまり困らないタイプですが、デバッガだけはGUIの方が見やすくて捗りますね。VSCodeのコード閲覧性が良いというのもありそうです。

できていない点

実質デバッガのアタッチしかできていません。ボードのリセット、実行ファイルのロードを端末から手動でやっている点が非常にイマイチです。

VSCodeのC/C++ Debugger Extensionは良く知らないので、VSCodeから実行する方法が判明したら追記しておきます。

編集者:すずき(2024/01/05 19:48)

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2024年1月2日

羽田空港で大事故

早朝の便で東京に帰ってきました。

Twitterで羽田空港がどうこうと騒いでいる人がたくさんいて、何かあったのか?とニュースを見たら、羽田空港で日本航空機のエアバスA350と海上保安庁機のボンバルディアDHC8が滑走路上で衝突し、日航機が爆発炎上しているLive映像が流れていました。さっきまで居た羽田空港……だよな?炎上してる……。

A350は炎上してほぼ灰になったにも関わらず、400人もの乗客が全員脱出に成功して死者が一人も出なかったのは奇跡です。日本航空が日頃から安全を重視して取り組んでいる賜物だと思います。

それにしても2024年は1月1日から大災害、大事故が連続しており、何とも不安になるスタートですね……。

編集者:すずき(2024/01/05 18:26)

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2024年1月1日

石川の大地震

鳥取4日目。2024年が明けました。今年もよろしくお願いいたします。

夕方、奥さんと外を散歩していたら風もないのに近所の家の窓がガタガタと10〜20秒?ほど揺れ続けました。何だ?と思う間に地震警報が発令され、能登半島で大地震があったことを知ったのでした。

地震の後のニュースでは(特にNHKの山内泉アナウンサーが顕著でした)逃げろ、高い場所に逃げろ、テレビなんか見てないで明るいうちに早く逃げろ!という切実な想いが伝わってきました。

ニュースは感情を煽らないのが通常です。しかし東日本大震災では避難を冷静に呼びかけたところ、津波の高さが想像できなかったのか避難が遅れて津波に巻き込まれて亡くなった人がたくさんいたそうです。

東日本大震災の悲しい教訓から、NHKは「今すぐ高いところに逃げること!」とやや感情的に呼びかけるようにした(「東日本大震災を思い出してください!」その時、ことばで命を守れるか。NHKアナウンサーたちの10年 - NHK)のだそうです。

NHKの取り組みは非常に良い取り組みだと思います。

編集者:すずき(2024/01/05 18:07)

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2023年12月31日

VSCodeでRISC-Vボードをデバッグその3 - Linuxマシン側の準備(Akaria BSP)

目次: Linux

前回はLinuxマシンだけを使って、OpenOCDとGDBでRISC-Vボードをデバッグする方法を紹介しました。

今回はそのおまけです。VSCodeのデバッグの話を見たい方はその4をご覧ください。

デバッグ対象: Akaria NS31 on Arty 7

デバッグ対象は何でも良いと書きました。その例として、別のソフトウェア、別のボードを使うパターン(Akaria BSP + NS31 on Arty 7)を紹介します。

FPGAへの書き込み方は以前の日記(2023年4月24日の日記参照)でご紹介しました。そちらをご覧ください。

ツールチェーンのインストールをします。ディレクトリはどこでも良いですが、ここでは~/workで作業しているものとします。

RISC-V用ツールチェーンのインストール
$ cd ~/work
$ wget https://github.com/nsitexe/akaria-riscv-toolchain/releases/download/nsitexe-20231117/riscv64-unknown-elf_ubuntu22.tar.gz
$ tar xf riscv64-unknown-elf_ubuntu22.tar.gz
$ export PATH=~/work/riscv64-unknown-elf/bin:$PATH

$ riscv64-unknown-elf-gdb --version

GNU gdb (GDB) 13.0.50.20220805-git
Copyright (C) 2022 Free Software Foundation, Inc.
License GPLv3+: GNU GPL version 3 or later <http://gnu.org/licenses/gpl.html>
This is free software: you are free to change and redistribute it.
There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law.

次にAkaria BSPのビルドをします。

Akaria BSPのビルド
$ git clone https://github.com/nsitexe/akaria-bmetal
$ cd akaria-bmetal/
$ rm -r build
$ cmake -B build -G Ninja -DARCH=riscv \
    -DCROSS_COMPILE=riscv64-unknown-elf- \
    -DCC=gcc \
    -DCMAKE_BUILD_TYPE=RelWithDebInfo \
    -DCMAKE_INSTALL_PREFIX=test/sysroot/ \
    -DDEFCONF=riscv_nsitexe_ns31_arty

CMake Warning (dev) at CMakeLists.txt:3 (project):
  cmake_minimum_required() should be called prior to this top-level project()
  call.  Please see the cmake-commands(7) manual for usage documentation of
  both commands.
This warning is for project developers.  Use -Wno-dev to suppress it.

-- The C compiler identification is GNU 13.2.0
-- The CXX compiler identification is GNU 13.2.0
-- Detecting C compiler ABI info
-- Detecting C compiler ABI info - done
-- Check for working C compiler: /usr/lib/ccache/cc - skipped
-- Detecting C compile features
-- Detecting C compile features - done
-- Detecting CXX compiler ABI info
-- Detecting CXX compiler ABI info - done
-- Check for working CXX compiler: /usr/lib/ccache/c++ - skipped
-- Detecting CXX compile features
-- Detecting CXX compile features - done
-- The ASM compiler identification is GNU
-- Found assembler: /usr/lib/ccache/cc
---- CC is 'gcc'
---- Compiler is 'riscv64-unknown-elf-gcc'
---- CCASM is 'gcc'
---- Assembler is 'riscv64-unknown-elf-gcc'
---- DEFCONF is 'riscv_nsitexe_ns31_arty'
---- CONF dir is '/home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/config'
---- ARCH dir is '/home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/arch/riscv'
---- SOC dir is '/home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/arch/riscv/nsitexe_ns31'
---- BOARD dir is '/home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/board/riscv/nsitexe_ns31_arty'
---- arch  is riscv
---- march is 'rv32imafc_zicsr_zifencei'
---- mabi  is 'ilp32f'
-- Found Doxygen: /usr/bin/doxygen (found version "1.9.4") found components: doxygen dot
-- Configuring done (0.3s)
-- Generating done (0.0s)
-- Build files have been written to: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/build


$ ninja -C build install

ninja: Entering directory `build'
[46/47] Install the project...
-- Install configuration: "RelWithDebInfo"
-- Installing: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/bin/add_auxdata
-- Installing: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/lib/libbmetal_crt.a
-- Installing: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/include/bmetal
-- Installing: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/include/bmetal/bmetal.h
-- Up-to-date: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/include/bmetal
-- Installing: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/include/bmetal/generated
-- Installing: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/include/bmetal/generated/autoconf.h
-- Installing: /home/katsuhiro/work/akaria-bmetal/test/sysroot/include/bmetal/generated/linker_gen.ld

テストアプリをビルドします。

Akaria BSPテストアプリのビルド
$ cd ~/work/akaria-bmetal/test
$ make USE_NEWLIB=y

ビルドできました。1つ目の端末にてOpenOCDを起動します。

OpenOCDの起動
$ sudo openocd -c 'bindto 0.0.0.0' -f tcl/interface/jlink.cfg -f ./openocd-ns31.cfg

JTAGインタフェース用の設定ファイルtcl/interface/jlink.cfgはその2(2023年12月30日の日記参照)にてご紹介しています。SEGGER J-Link以外のインタフェースをご利用の場合は適宜変更をお願いします。

NS31 on Arty 7用の設定ファイルopenocd-ns31.cfgは以前の日記(2023年4月7日の日記参照)にてご紹介しています。

2つ目の端末にてGDBを使ってロード&実行します。

GDBによるロード&実行
$ riscv64-unknown-elf-gdb hello

(gdb) target remote :3333
(gdb) monitor reset halt
(gdb) load
(gdb) continue

UARTから出力されていることを確認します。

NS31 on Arty 7のUART出力
$ pyserial-miniterm /dev/ttyUSB1 9600 --raw

--- Miniterm on /dev/ttyUSB1  9600,8,N,1 ---
--- Quit: Ctrl+] | Menu: Ctrl+T | Help: Ctrl+T followed by Ctrl+H ---
hello world!
good bye world!

Zephyr + HiFive1のときとロード&実行方法は一緒です。最初はとっつきにくいかもしれませんが、OpenOCDとGDBの組み合わせであれば他のソフトウェア、他のボードでもほぼ一緒の使い勝手で便利です。

編集者:すずき(2024/01/05 16:54)

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2023年12月30日

VSCodeでRISC-Vボードをデバッグその2 - Linuxマシン側の準備(Zephyr RTOS)

目次: Linux

前回はVisual Studio Code(以降VSCode)とSSH Remote Extensionを使ってLinuxマシンに接続するところまでを設定しました。

今回はその続き……の前に準備としてLinuxマシンだけを使って、

  • OpenOCDを起動
  • GDBで実行ファイルをロード&実行
  • GDBでCUIデバッグする方法

を紹介します。

デバッグ対象: SiFive HiFive1ボード

デバッグ対象は何でも良いですがそう言われても困ると思うのでZephyr RTOSとSiFive HiFive1 Rev Bボードを使用します。Zephyr RTOSの開発環境セットアップとビルドは以前の日記(2023年12月27日の日記参照)で紹介しています。

以前の日記ではQEMU向けにビルドしましたが、今回は実ボードSiFive HiFive1 Rev B向けにビルドします。といってもほぼ同じです。下記のようにします。

Zephyrのビルド(west版)
$ west build -p always -b hifive1_revb samples/hello_world/
$ west flash

これでボードに実行ファイルが書き込まれて実行開始されるはずですが、これじゃ何だかわからない、中身をもう少し知りたい、という方のためにCMakeとGDBを使った手順を紹介します。

Zephyrのビルド(CMake版)
$ rm -r build
$ cmake -B build -G Ninja -DBOARD=hifive1_revb samples/hello_world
$ ninja -C build

$ ls build/zephyr
CMakeFiles           kernel                      zephyr.bin
arch                 lib                         zephyr.dts
boards               libzephyr.a                 zephyr.dts.d
cmake                linker.cmd                  zephyr.dts.pre
cmake_install.cmake  linker.cmd.dep              zephyr.elf    ★これがGDBなどで使う実行ファイル
drivers              linker_zephyr_pre0.cmd      zephyr.lst
dts.cmake            linker_zephyr_pre0.cmd.dep  zephyr.map
edt.pickle           misc                        zephyr.stat
include              runners.yaml                zephyr_final.map
isrList.bin          snippets_generated.cmake    zephyr_pre0.elf
isr_tables.c         soc                         zephyr_pre0.map
kconfig              subsys

ビルドに成功するとbuild/zephyr/zephyr.elfという実行ファイル(ELF形式)が生成されるはずです。

OpenOCDを起動

SiFive HiFive1ボードとLinuxマシンを以下の図のように接続しているとします。


SiFive HiFive1ボードとLinuxマシンの接続

端末を2つ用意し、1つ目の端末でOpenOCDを起動します。システムにインストールされているOpenOCDのバージョンによっては動かないかもしれません。OpenOCDのビルドについては以前の日記(2023年6月28日の日記参照)で紹介しています。

OpenOCDの起動(Linux単独版)
$ sudo openocd -c 'bindto 0.0.0.0' -f tcl/interface/jlink.cfg -f tcl/board/sifive-hifive1-revb.cfg

Open On-Chip Debugger 0.12.0+dev-01422-g1b0b07baa-dirty (2023-11-30-05:58)
Licensed under GNU GPL v2
For bug reports, read
        http://openocd.org/doc/doxygen/bugs.html
Warn : Interface already configured, ignoring
Info : J-Link OB-K22-SiFive compiled Nov 22 2019 12:57:38
Info : Hardware version: 1.00
Info : VTarget = 3.300 V
Info : clock speed 4000 kHz
Info : JTAG tap: riscv.cpu tap/device found: 0x20000913 (mfg: 0x489 (SiFive Inc)
, part: 0x0000, ver: 0x2)
Info : datacount=1 progbufsize=16
Info : Disabling abstract command reads from CSRs.
Info : Examined RISC-V core; found 1 harts
Info :  hart 0: XLEN=32, misa=0x40101105
Info : starting gdb server for riscv.cpu.0 on 3333
Info : Listening on port 3333 for gdb connections
Info : Found flash device 'issi is25lp032' (ID 0x0016609d)
Ready for Remote Connections
Info : Listening on port 6666 for tcl connections
Info : Listening on port 4444 for telnet connections

OpenOCDに指定しているtcl/interface/xxxx.cfgというファイルは、OpenOCDのソースコードに含まれています。GitでOpenOCDのソースコードを丸ごと持ってくるか、

OpenOCDのソースコードリポジトリ取得
$ git clone https://git.code.sf.net/p/openocd/code openocd-code

コードを眺めるだけならGitHubのミラー(GitHubへのリンク)が見やすいです。

必要なファイルだけ見たい人は上記のリンクからどうぞ。

GDBで実行ファイルをロード&実行

次に2つ目の端末にてGDBを起動します。Zephyr SDKへのパスを通すのをお忘れなく。パスの通し方は(2023年12月27日の日記参照)の「Zephyr開発環境への入り方」を参照してください。

GDBの起動(Linux単独版)
$ riscv64-zephyr-elf-gdb build/zephyr/zephyr.elf

(略)

For help, type "help".
Type "apropos word" to search for commands related to "word"...
Reading symbols from build/zephyr/zephyr.elf...

(gdb) target remote :3333

(gdb) monitor reset halt

(gdb) load

Loading section rom_start, size 0x18 lma 0x20010000
Loading section reset, size 0x6 lma 0x20010018
Loading section exceptions, size 0x146 lma 0x20010020
Loading section text, size 0x35a2 lma 0x20010168
Loading section initlevel, size 0x40 lma 0x2001370c
Loading section device_area, size 0x50 lma 0x2001374c
Loading section sw_isr_table, size 0x200 lma 0x2001379c
Loading section log_const_area, size 0x20 lma 0x2001399c
Loading section rodata, size 0x460 lma 0x200139bc
Loading section datas, size 0xdc lma 0x20013e1c
Loading section device_states, size 0x8 lma 0x20013ef8
Loading section .last_section, size 0x4 lma 0x20013f00
Start address 0x20010000, load size 16126
Transfer rate: 595 bytes/sec, 1343 bytes/write.

(gdb) continue

HiFive1のUARTからZephyrというかHello worldアプリのメッセージが出ていることを確認しましょう。

HiFive1のUART確認
$ pyserial-miniterm /dev/ttyACM0 115200

--- Miniterm on /dev/ttyACM0  115200,8,N,1 ---
--- Quit: Ctrl+] | Menu: Ctrl+T | Help: Ctrl+T followed by Ctrl+H ---
*** Booting Zephyr OS build zephyr-v3.4.0-1149-g2bf091f8af5b ***
Hello World! hifive1_revb

HiFive1は動作が遅いためかOpenOCD側に下記のような警告が何度か出ます。

OpenOCDの警告
JTAG tap: riscv.cpu tap/device found: 0x20000913 (mfg: 0x489 (SiFive Inc), part: 0x0000, ver: 0x2)
keep_alive() was not invoked in the 1000 ms timelimit. GDB alive packet not sent! (1497 ms). Workaround: increase "set remotetimeout" in GDB

動作に支障はないですが、警告に書いてあるworkaroundの通りset remotetimeout unlimitedとしても警告が出続けるのは若干気になりますね……。

GDBでCUIデバッグする方法

普通のLinuxアプリケーションをデバッグするときと同じように使えます。

GDB CUIによるデバッグ
(gdb) monitor reset halt

(gdb) d

Delete all breakpoints? (y or n) y

(gdb) hb main

Hardware assisted breakpoint 1 at 0x20010970: file zephyr/zephyr/samples/hello_world/src/main.c, line 11.

(gdb) c

Continuing.

Breakpoint 1, main () at zephyr/zephyr/samples/hello_world/src/main.c:11
11              printk("Hello World! %s\n", CONFIG_BOARD);

HiFive1はRAMが非常に少ないためXIP(Execution In Place)つまりフラッシュROM上のプログラムを直接実行します。そのためブレークポイントは自動的にハードウェア支援ブレークポイント(hbで使えるものと一緒)になります。ハードウェア支援ブレークポイントは設定可能な数に上限があるため、通常のブレークポイントと挙動が異なったり、エラーになったりすることがあります。

あと全体的に非常に遅いです。stepやnextを実行するとしばらく反応が返ってきません。例として使うには良くなかったかな……。

おまけ、リモートデバッグ

これだけだとwestの焼き直しで面白くないので、おまけとして遠隔地にあるボードを扱う方法をご紹介します。

繰り返しになりますがOpenOCDのビルドについては以前の日記(2023年6月28日の日記参照)で紹介しています。Raspberry Pi用のOpenOCDをビルドするときにご参照ください。

SiFive HiFive1ボードとRaspberry PiとLinuxマシンを以下の図のように接続しているとします。Linuxマシンもしくは、HiFive1ボードとRaspberry Piのペアがお互いに離れている状況を考えてもらうとわかりやすいかと思います。


例えばLinuxマシンを2階におき、Raspberry PiとHiFive1ボード(とLinuxマシンを操作するノートPCとか)を1階の机に置く、といったデバッグ環境が作れます。家と会社などでもアリです。

やることは基本的に同じです。Raspberry Pi側で1つ目の端末を起動し、OpenOCDを起動します。起動するコマンドも同じです。

OpenOCDの起動(LinuxとRasPiコンビ版)
#### Raspberry Pi側の端末

$ sudo openocd -c 'bindto 0.0.0.0' -f tcl/interface/jlink.cfg -f tcl/board/sifive-hifive1-revb.cfg

Open On-Chip Debugger 0.12.0+dev-01422-g1b0b07baa-dirty (2023-11-30-05:58)
Licensed under GNU GPL v2
For bug reports, read
        http://openocd.org/doc/doxygen/bugs.html
Warn : Interface already configured, ignoring
Info : J-Link OB-K22-SiFive compiled Nov 22 2019 12:57:38
Info : Hardware version: 1.00
Info : VTarget = 3.300 V
Info : clock speed 4000 kHz
Info : JTAG tap: riscv.cpu tap/device found: 0x20000913 (mfg: 0x489 (SiFive Inc)
, part: 0x0000, ver: 0x2)
Info : datacount=1 progbufsize=16
Info : Disabling abstract command reads from CSRs.
Info : Examined RISC-V core; found 1 harts
Info :  hart 0: XLEN=32, misa=0x40101105
Info : starting gdb server for riscv.cpu.0 on 3333
Info : Listening on port 3333 for gdb connections
Info : Found flash device 'issi is25lp032' (ID 0x0016609d)
Ready for Remote Connections
Info : Listening on port 6666 for tcl connections
Info : Listening on port 4444 for telnet connections

次にLinux側で2つ目の端末を起動し、GDBを起動します。異なるのはremote targetコマンドの部分のみです。Raspberry PiのIPアドレスが192.168.1.10だとします。

GDBの起動(LinuxとRasPiコンビ版)
#### Linuxマシン側の端末

$ riscv64-zephyr-elf-gdb build/zephyr/zephyr.elf

(略)

For help, type "help".
Type "apropos word" to search for commands related to "word"...
Reading symbols from build/zephyr/zephyr.elf...

(gdb) target remote 192.168.1.10:3333

(gdb) monitor reset halt

(gdb) load

Loading section rom_start, size 0x18 lma 0x20010000
Loading section reset, size 0x6 lma 0x20010018
Loading section exceptions, size 0x146 lma 0x20010020
Loading section text, size 0x35a2 lma 0x20010168
Loading section initlevel, size 0x40 lma 0x2001370c
Loading section device_area, size 0x50 lma 0x2001374c
Loading section sw_isr_table, size 0x200 lma 0x2001379c
Loading section log_const_area, size 0x20 lma 0x2001399c
Loading section rodata, size 0x460 lma 0x200139bc
Loading section datas, size 0xdc lma 0x20013e1c
Loading section device_states, size 0x8 lma 0x20013ef8
Loading section .last_section, size 0x4 lma 0x20013f00
Start address 0x20010000, load size 16126
Transfer rate: 595 bytes/sec, 1343 bytes/write.

(gdb) continue

GDBとOpenOCD間がTCP/IPで通信しているからできる技ですね。使ってみるとわかる便利さです。

編集者:すずき(2024/01/05 16:54)

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2023年12月29日

VSCodeでRISC-Vボードをデバッグその1 - SSH Remote Extensionの設定

目次: Linux

Visual Studio Code(以降VSCode)のSSH Remote Extensionを使って、LinuxマシンのGDBを起動、OpenOCDに接続、RISC-Vボードをデバッグする方法をメモしておきます。

以前紹介した方法(2021年3月3日の日記参照)と似ていますがWindows用のGDBバイナリをビルドする必要がないという利点があります。

今回はSSH Remote Extensionのインストールと設定です。


SSH Remote Extensionのインストール

最初にExtensionsからSSH Remoteをインストールします。


SSH Remote接続先の指定

REMOTE EXPLORER(矢印1)からNew Remoteを選択して(矢印2)GDBがインストールされているLinuxマシンを指定します(矢印3)。指定方法は例にある通りusername@hostnameです。


SSH設定を保存するファイル名の指定

SSHの接続先設定を保存するファイル名を指定します。私は特にこだわりがないので、デフォルトのC:\Users\(ユーザー名)\.ssh\configを使いました。


SSHで接続

SSHの設定を追加したら、REMOTES (TUNNELS/SSH)のRefreshを押します(矢印1)。追加した設定が表示されたらConnect in Current Windowを押します(矢印2)。


SSH接続先のPlatform指定

接続先のマシンはLinuxか?Windowsか?macOSか?と聞かれます。今回はLinuxを使っているのでLinuxを選択します。


SSH Fingerprintの表示と確認

接続しようとしているホストのfingerprintが表示され、本当に接続するか?と質問されます。初めて接続するホストの場合は必ず聞かれます。continueを押してください。

もしこの質問が2回目以降の接続で表示される場合は、異なるホストが同じIPアドレスを使用しているなど何らかの異常が発生している可能性があります。迂闊にcontinueを押さず、本当に接続して良いか確認してください。


SSHパスワードの入力

パスワードを入力してください。


SSH接続先のディレクトリ指定

接続に成功するとWelcome画面が表示されるはずなので、Open Folder(矢印1)を押して、デバッグしたいソースコードがあるディレクトリのパスを指定(矢印2)します。

続きはまた今度。

編集者:すずき(2024/01/05 16:00)

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2023年12月28日

帰省

今年は奥さんの実家である鳥取に帰省しました。

夫婦お互いの実家が近ければそれぞれ3日ずつ滞在などできますが、我が家の場合は結構遠い(奥さんは鳥取、私は北海道)のです……。仕方ないので帰省のルールとして、

  • 正月、GW、お盆の年3回帰省する
  • 夫婦一緒に帰省する
  • 行き先は毎回変える(GW: 鳥取、お盆: 北海道、正月: 鳥取、GW: 北海道、、、のように)

というルールで運用していました。なので鳥取での年越しは2年に1回となりますが、近年はCOVID-19騒ぎで帰れなかったり、自分達もCOVIDに感染したりでルール運用が乱れ、鳥取での年越しのチャンスがありませんでした。

たぶん2019年末以来じゃないかな?つまり4年ぶり?

編集者:すずき(2024/01/05 16:16)

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2023年12月27日

Hello! Zephyr OS!!(2023年版)

目次: Zephyr

Zephyr RTOSのインストール、ビルドの手順が少し変わったので改めて紹介したいと思います。

基本的にはZephyrのGetting Startedに記載の通りですが、実行する上での補足や引っかかるところを説明したいと思います。

Zephyr開発環境のセットアップ

以降、作業するディレクトリは~/workとします。

ZephyrのGetting Startedを順に実行します。既存のPython環境を壊さないようにInstall within virtual environmentの手順を使うことをお勧めします。

依存ツールインストールとPython venv環境の作成

# apt-get install git cmake ninja-build gperf \
    ccache dfu-util device-tree-compiler wget \
    python3-dev python3-pip python3-setuptools python3-tk python3-wheel xz-utils file \
    make gcc gcc-multilib g++-multilib libsdl2-dev libmagic1

# apt-get install python3-venv

$ cd ~/work/zephyr-sdk-0.16.4/
$ python3 -m venv _venv
$ source ~/work/zephyr-sdk-0.16.4/_venv/bin/activate

Python venvを有効にするとシェルのプロンプトの頭に(_venv)のような環境名が付くようになります。venv用のディレクトリはどこに作成しても良いです。私はZephyr SDKの下に作ることが多いです。作成済みのvenvを再度使うときはsource ~/work/zephyr-sdk-0.16.4/_venv/bin/activateを実行します。

続きを実行しましょう。westを使ってZephyrと周辺ツール群をダウンロードします。

Zephyrと周辺ツール群をダウンロード
$ pip install west
$ cd ~/work
$ west init zephyr

=== Initializing in /home/katsuhiro/work/zephyr
--- Cloning manifest repository from https://github.com/zephyrproject-rtos/zephyr
Cloning into '/home/katsuhiro/work/zephyr/.west/manifest-tmp'...
remote: Enumerating objects: 968377, done.
remote: Counting objects: 100% (17/17), done.
remote: Compressing objects: 100% (13/13), done.
remote: Total 968377 (delta 8), reused 8 (delta 4), pack-reused 968360
Receiving objects: 100% (968377/968377), 600.07 MiB | 20.80 MiB/s, done.
Resolving deltas: 100% (733897/733897), done.
Updating files: 100% (31355/31355), done.
--- setting manifest.path to zephyr
=== Initialized. Now run "west update" inside /home/katsuhiro/work/zephyr.

$ cd ~/work/zephyr
$ west update

(大量にリポジトリがクローンされますのでしばし待ちます)


$ west zephyr-export

Zephyr (/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/share/zephyr-package/cmake)
has been added to the user package registry in:
~/.cmake/packages/Zephyr

ZephyrUnittest (/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/share/zephyrunittest-package/cmake)
has been added to the user package registry in:
~/.cmake/packages/ZephyrUnittest


$ pip install -r ~/work/zephyr/zephyr/scripts/requirements.txt

(大量にモジュールがインストールされますのでしばし待ちます)

基本的にはコマンドを実行して待つだけです。たぶん。

SDKをインストールします。アーカイブはGitHubのreleaseページから取得できます。特にこだわりがなければ、現状の最新版である0.16.4を使ってください。

アーカイブがたくさんあって迷うと思いますが、今回はサイズが小さくてインストールするツールチェーンを選択できるzephyr-sdk-0.16.4_linux-x86_64_minimal.tar.xzを使います。

Zephyr SDKのインストール
$ wget https://github.com/zephyrproject-rtos/sdk-ng/releases/download/v0.16.4/zephyr-sdk-0.16.4_linux-x86_64_minimal.tar.xz
$ tar xf zephyr-sdk-0.16.4_linux-x86_64_minimal.tar.xz
$ cd ~/work/zephyr-sdk-0.16.4/

$ ./setup.sh -c -t riscv64-zephyr-elf

Zephyr SDK 0.16.4 Setup

Installing 'riscv64-zephyr-elf' toolchain ...
toolchain_linux-x86 100%[===================>] 105.07M  24.7MB/s 時間 4.3s

All done.

何も引数を付けずにすべてインストールしても良いです(が、結構時間が掛かります)。今回はRISC-V向けのツールチェーンがあれば良いので-t riscv64-zephyr-elfを付けることで時間短縮しました。注意点としては-cオプションを忘れないようにしてください。Zephyrビルド時にエラーが発生します。

次にhosttoolsをインストールします。要らない場合もありますが、今回はQEMUを使って動作確認したいのでインストールしましょう。

hosttoolsのインストール
$ ./zephyr-sdk-x86_64-hosttools-standalone-0.9.sh

Zephyr Yocto Toolchain SDK installer version 0.9
================================================
Enter target directory for SDK (default: /opt/zephyr-sdk/0.9): /home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4/host
You are about to install the SDK to "/home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4/host". Proceed [Y/n]? y
Extracting SDK..................done
Setting it up...done
SDK has been successfully set up and is ready to be used.
Each time you wish to use the SDK in a new shell session, you need to source the environment setup script e.g.
 $ . /home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4/host/environment-setup-x86_64-pokysdk-linux

上記の作業を全て終えた後のディレクトリ構造はこんな感じです。

Zephyr開発環境のディレクトリ構成
$ tree -L 2 ~/work

/home/katsuhiro/work
|-- zephyr
|   |-- bootloader
|   |-- modules
|   |-- tools
|   `-- zephyr                ★Zephyr RTOSのコード
|-- zephyr-sdk-0.16.4
|   |-- _venv
|   |-- cmake
|   |-- host                  ★hosttools
|   |-- riscv64-zephyr-elf    ★RISC-V用ツールチェーン
|   |-- sdk_toolchains
|   |-- sdk_version
|   |-- setup.sh
|   `-- zephyr-sdk-x86_64-hosttools-standalone-0.9.sh
`-- zephyr-sdk-0.16.4_linux-x86_64_minimal.tar.xz

Zephyr開発環境はセットアップ手順は短くなったとは思うんですけど、中身は複雑になってトラブルが起きたときの解決が困難になった印象です。昔より依存するツールが増えているのかな……?

Zephyr開発環境への入り方

使用したいツールに応じて環境を有効化すると良いです。

Zephyr開発環境への入り方の例
#### Python venv環境を有効化

$ source ~/work/zephyr-sdk-0.16.4/_venv/bin/activate

#### QEMUなどhosttoolsを使う場合、hosttoolsを有効化

$ source ~/work/zephyr-sdk-0.16.4/host/environment-setup-x86_64-pokysdk-linux

#### デバッガなどを直接実行するならばツールチェーンにパスを通す

$ export PATH=~/work/zephyr-sdk-0.16.4/riscv64-zephyr-elf/bin:$PATH

私はいちいち選ぶのが面倒なので、全部有効にしております。

Zephyrのビルドと実行

Zephyr開発環境が正常にセットアップできたかどうか確かめるため、QEMU向けにビルドしましょう。

Zephyrのビルド(west版)
$ cd ~/work/zephyr/zephyr
$ west build -p always -b qemu_riscv64 samples/hello_world/

(ログは省略)

ビルドできたので実行したいところですが、なぜかwestを使ってQEMUで実行する方法が見当たりません。仕方ないのでcmakeでビルド&実行します。こちらのやり方も覚えておいて損はないでしょう……。

Zephyrのビルド(cmake版)
$ cd ~/work/zephyr/zephyr
$ rm -r build
$ cmake -B build -G Ninja -DBOARD=qemu_riscv64 samples/hello_world

Loading Zephyr default modules (Zephyr repository).
-- Application: /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/samples/hello_world
-- CMake version: 3.22.1
-- Found Python3: /home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4/_venv/bin/python (found suitable version "3.10.12", minimum required is "3.8") found components: Interpreter
-- Cache files will be written to: /home/katsuhiro/.cache/zephyr
-- Zephyr version: 3.5.99 (/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr)
-- Found west (found suitable version "1.2.0", minimum required is "0.14.0")
-- Board: qemu_riscv64
-- ZEPHYR_TOOLCHAIN_VARIANT not set, trying to locate Zephyr SDK
-- Found host-tools: zephyr 0.16.4 (/home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4)
-- Found toolchain: zephyr 0.16.4 (/home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4)
-- Found Dtc: /home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4/host/sysroots/x86_64-pokysdk-linux/usr/bin/dtc (found suitable version "1.6.0", minimum required is "1.4.6")
-- Found BOARD.dts: /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/boards/riscv/qemu_riscv64/qemu_riscv64.dts
-- Generated zephyr.dts: /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/build/zephyr/zephyr.dts
-- Generated devicetree_generated.h: /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/build/zephyr/include/generated/devicetree_generated.h
-- Including generated dts.cmake file: /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/build/zephyr/dts.cmake
Parsing /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/Kconfig
Loaded configuration '/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/boards/riscv/qemu_riscv64/qemu_riscv64_defconfig'
Merged configuration '/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/samples/hello_world/prj.conf'
Configuration saved to '/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/build/zephyr/.config'
Kconfig header saved to '/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/build/zephyr/include/generated/autoconf.h'
-- Found GnuLd: /home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4/riscv64-zephyr-elf/bin/../lib/gcc/riscv64-zephyr-elf/12.2.0/../../../../riscv64-zephyr-elf/bin/ld.bfd (found version "2.38")
-- The C compiler identification is GNU 12.2.0
-- The CXX compiler identification is GNU 12.2.0
-- The ASM compiler identification is GNU
-- Found assembler: /home/katsuhiro/work/zephyr-sdk-0.16.4/riscv64-zephyr-elf/bin/riscv64-zephyr-elf-gcc
-- Using ccache: /usr/bin/ccache
-- Configuring done
-- Generating done
-- Build files have been written to: /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/build


$ ninja -C build

ninja: Entering directory `build'
[1/99] Preparing syscall dependency handling

[2/99] Generating include/generated/version.h
-- Zephyr version: 3.5.99 (/home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr), build: zephyr-v3.5.0-3603-g603c3af895b0
[98/99] Linking C executable zephyr/zephyr.elf
Memory region         Used Size  Region Size  %age Used
             RAM:       36140 B       256 MB      0.01%
        IDT_LIST:          0 GB         2 KB      0.00%
Generating files from /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/build/zephyr/zephyr.elf for board: qemu_riscv64
[99/99] cd /home/katsuhiro/work/zephyr.../zephyr/zephyr/build/zephyr/zephyr.elf


$ ninja -C build run

ninja: Entering directory `build'
[0/1] To exit from QEMU enter: 'CTRL+a, x'[QEMU] CPU: riscv64
*** Booting Zephyr OS build zephyr-v3.5.0-3603-g603c3af895b0 ***
Hello World! qemu_riscv64

実行できました。もしエラーが出る場合は次のトラブルシューティングもご参照ください。

トラブルシューティング

Zephyr SDKセットアップ時に-cオプションを付けない = Zephyr SDK cmake packageのインストールを忘れていると、Zephyrのビルド時に長々とエラーが出て怒られます。

Zephyr SDK cmake packageをインストールしていないと発生するエラー
CMake Error at /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/cmake/modules/FindZephyr-sdk.c
make:109 (find_package):
  Could not find a package configuration file provided by "Zephyr-sdk"
  (requested version 0.16) with any of the following names:

    Zephyr-sdkConfig.cmake
    zephyr-sdk-config.cmake

  Add the installation prefix of "Zephyr-sdk" to CMAKE_PREFIX_PATH or set
  "Zephyr-sdk_DIR" to a directory containing one of the above files.  If
  "Zephyr-sdk" provides a separate development package or SDK, be sure it has
  been installed.
Call Stack (most recent call first):
  /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/cmake/modules/FindHostTools.cmake:53 (find_package)
  /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/cmake/modules/dts.cmake:9 (find_package)
  /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/cmake/modules/zephyr_default.cmake:129 (include)
  /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/share/zephyr-package/cmake/ZephyrConfig.cmake:66 (include)
  /home/katsuhiro/work/zephyr/zephyr/share/zephyr-package/cmake/ZephyrConfig.cmake:92 (include_boilerplate)
  CMakeLists.txt:5 (find_package)

Zephyr SDKのセットアップは2回実行しても問題ないので-cオプションを付けてやり直しましょう。

編集者:すずき(2024/01/05 02:39)

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2023年12月25日

クロスビルド用ツールチェーン - なぜか必要なsysroot/usr/lib

目次: GCC

最近はRISC-V向けのクロスコンパイラをビルドすることが多かったのですが、昔を思い出してARM向けも作るか〜と気軽にやってみたらハマりました。

最初にトライしたのはarm-unknown-linux-gnueabi(昔の32bit ARM向け、ARM9とか)で、特に問題なくビルドできました。次にトライしたのはaarch64-unknown-linux-gnu(64bit ARM向け、最近のCortexとか)ですが、リンクエラーが発生してcrt1.oやcrti.oが見つからないと言ってきます。

AArch64向けクロスGCCのリンクエラー
$ aarch64-unknown-linux-gnu-gcc -Wall -O2 -g -static a.c

/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/bin/ld: cannot find crt1.o: No such file or directory
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/bin/ld: cannot find crti.o: No such file or directory
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/bin/ld: cannot find -lc: No such file or directory
collect2: error: ld returned 1 exit status

最初はglibcのビルドに失敗したのかと思いましたが、crt1.oはsysroot/usr/lib64ディレクトリの下に存在していました。

glibcのファイル(crt1.o)は存在している
$ find -name crt1.o

./aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/usr/lib64/crt1.o

ファイルが存在しているのに見つからないのは、GCCが自動的に付与する-Lオプションが間違っている可能性大です。-vオプションでGCCのオプションを調べます。

うまくいかないときのGCC -vオプションの出力(一部抜粋)
--sysroot=/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot 
-Bstatic 
-X 
-EL 
-maarch64linux 
crt1.o 
crti.o 
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/crtbeginT.o 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/lib/../lib64 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/lib/../lib64     ★★相対パスが入っている★★
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/lib 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/lib 
/tmp/ccQ9tEVu.o 
--start-group 
-lgcc 
-lgcc_eh 
-lc 
--end-group 
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/crtend.o 
crtn.o

困ったことにsysroot/usr/lib64を指定する-Lオプションがありません。なぜでしょう。

手掛かりになりそうなのは、sysroot/lib64ディレクトリの指定の仕方で、lib/../lib64のように一度libを経由しています。実はsysroot/usr/lib64も同じでsysroot/usr/libを経由している可能性があります。

ディレクトリの構造を調べるとsysroot/libは存在するものの、sysroot/usr/libは存在しませんでした。試しに空のsysroot/usr/libディレクトリを作成し、再度コンパイルするとエラーが解消しました。やったー。エラーだった時と何が違うか知るために-vオプションでGCCのオプションを調べます。

うまくいったときのGCC -vオプションの出力(一部抜粋)
--sysroot=/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot 
-Bstatic 
-X 
-EL 
-maarch64linux 
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/usr/lib/../lib64/crt1.o 
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/usr/lib/../lib64/crti.o 
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/crtbeginT.o 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/lib/../lib64 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/lib/../lib64 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/usr/lib/../lib64     ★★やっぱりlib/../lib64になっている★★
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/../../../../aarch64-unknown-linux-gnu/lib 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/lib 
-L/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/usr/lib 
/tmp/ccLe9HUo.o 
--start-group 
-lgcc 
-lgcc_eh 
-lc 
--end-group 
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/lib/gcc/aarch64-unknown-linux-gnu/12.0.1/crtend.o 
/path/to/aarch64-unknown-linux-gnu/aarch64-unknown-linux-gnu/sysroot/usr/lib/../lib64/crtn.o

やはりsysroot/usr/lib64を指定するパスにはsysroot/usr/libが含まれていました。原因は「最終のディレクトリに辿り着く途中のパスが存在しないから」と言えそうです。しかしどうしてGCCが勝手に-Lオプションを消すのかは謎のままで、若干スッキリしません。うーん。

編集者:すずき(2023/12/25 02:08)

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